AIT DAC AK4191/BD34302 (2026ver) 2026年05月31日 21:56
http://blog.livedoor.jp/johnny_trio_lsr/archives/2312400.html
http://blog.livedoor.jp/johnny_trio_lsr/archives/2312400.html
On Age Audio
Old Speakers鳴らしこみ/改造記

AIT DAC AK4191/BD34302 (2026ver)
AIT研究所の最新Dacを試しています。
試聴機貸し出しをしてもらったのは、26年時点最新バージョン。
私が持っているのは2019年頃の仕様なので、6年分の進化をした姿を見ることになります。
AIT研究所のDACは、開発者にして社長の角田氏が心血を注いで開発したもので2010年頃に登場したのですが、当時の登場はとてもインパクトの強いものでした。
2010年代初頭、鳴り物入りで登場した高特性高音質DACとしてESS TechnologyのES9108Sがありましたが、音質評価は高いものの扱いづらいことで有名で、結構な大メーカーの製品でもDACチップに搭載されているジッター低減PLL設定を最も音質の良いとされる「Lowest」に設定すると、結構な頻度で音切れが発生していました。
それを受け当時のマニアの間では、ES9018S搭載DACで音切れが発生しないジッターの少ないデジタルトランスポートの存在などの情報交換が活況を呈してる状況でした。
そんな中登場したAIT DACは、独自のFiFoバッファによる長周期(低周波側まで効く)のジッターまで低減可能なPLLを搭載し、まったくESSのロック外れ=音切れを発生させない上に、その音は巷に増えていた凡百のメーカーのES9018S搭載DACとは一線を画す、大変に滑らかで解像感の高い、質の高い音を実現していました。
2012年に試聴したAIT DACプロトタイプのES9018S Dual
、多くのオーディオ愛好家がAIT DACを試すきっかけとなったと思います。
それから時がたち、
AIT ES9038Pro Dualを試聴(2016年)
その後FPGAを用いた独自のDSD1024リアルタイムアップサンプリングや、10000タップに及ぶ独自のPCMオーバーサンプリングの実装、旭化成の最高性能DACチップセットであるAK4191+AK4499にも対応し、ついにはROHMの旗艦DAC MUS-IC BD34302ekVにも対応しました。
しかも単にBD34302ekvを使用するのではなく、マルチビットデルタシグマ変換モジュールに旭化成のAK4191を使った、ハイブリッド構成です。
開発意図は、旭化成はAK4499EXが癖があり思ったほど高音質でもなかったこと、AK4191はとても優秀だったことを踏まえ、AK4191でマルチビットデルタシグマ変換した高品質な信号を癖なく高特性に変換できるDACチップを探していたところ、ROHMのBD34302ekvが適合したから、、だったそうです。
このあたりの開発経緯はAIT Laboのブログに書いてあるので、興味のある方はこちらへどうぞ
さて、そんな市場に数えるほどしかない他社のハイエンドチップ、しかも組み合わせて使うことなど勿論想定すらされていない組み合わせを、独自の実装で実現した最新AIT DAC、、、
もちろん、AIT 独自のFPGAによる10000タップに及ぶ長タップを用いたPCMアップサンプリング(L:x16倍(705/768kHz)、H:x32倍(1411/1536kHz)とDSD1024(45.15MHz 1bit/49.15MHz)へのアップサンプリングも利用可能です。
そんな全く隙がない仕様と構成を実現している最新AIT DACはどんな音だったのか、印象など書いていきます。
1.音質の印象
今回は手元のAIT DAC ES9038 Pro(Dual仕様)と比べます。2018年頃の仕様です。
試聴はパソコンのHQ PlayerかTune Browseからの再生/USB出力で比べます。
まず音出しした瞬間に、ボーカルや楽器が一段後ろの方から鳴ってくるような印象をうけます。
AIT ES9038 Pro Dualに比べて一番違うのはSN感で、音の細部が緻密に分解されていて空間情報が豊富で、音場空間が2~3周りは広く拡がる中に、滲みない音像がほっそりと浮き上がります。
比べるとAIT 9038Proバージョンは中高域の一部が少し角張っており、カンカン・ザラザラした質感をまとっている音の輪郭感として前に音が張り出してくる印象すらあり、空間の中に浮かぶ音像は少し太く滲んでいます。
実は旧AITDACは、この少し張った中高域が先頭に立ってすこし前に張り出す印象のため、少し音が腰高に感じることがあり、それが楽曲によっては少し明るめに感じるウィークポイントでもありました。
ところが最新AIT DACはその中高域が見事に分解され、超高域に至るまで緻密に超微細な音の粒子で満たされているような鳴り方に変わるためか、、、、
結果として派手さが無くなり音像が後ろに引っ込み、音場空間は広くなり、音の重心すら少し下がったような音色の落ち着きがあります。
この音像が僅かに後ろにも広がるような音場空間への溶け込み感があることと、ゆったりと自然な雰囲気をまとっていることがこれまでのESS SaberDACを採用したAITからは感じられなかった要素であり、僅かにSMSL D300(ROHM BD34301ekv搭載)にも通じる雰囲気があります。
勿論全体のバランスや緻密さなどは全然違いますが、確実にROHMのDACが標榜する再現性の一端はAIT最新DACにも表れているように感じました。
ちなみに音色が落ち着いた、といっても、従来AIT DACを使っているユーザーがセッティングやケーブルなどを変更しないといけなくなるような帯域バランスの変化はありません
基本的な帯域バランスとしてはAIT DACに共通するフラットバランス~僅かにスッキリした方向に寄ったもので、市販のメーカー品によくある中低域が盛られたリスニングの心地よさに寄せたような個性や、高域がロールオフした艶を重視したような癖もありません。
そういう表面的な大きな音作りに起因するような部分はほぼ同じなのに、全体の分解能の偏りがなくなり細部の表現力が圧倒的に上がったことで、落ち着きすら感じる聴感になっているわけです。
・・・だからこそ現在AIT DACを使っている人には無条件にアップデートや買い替えをお勧めしたい出来栄えです。
AIT DACを使っている人には伝わると思いますが、音を出した瞬間の音の真実をみつけたような感覚、、、それをこれほどの高純度で実現するDACは、やはりこの最新のAIT DAC以外には無いだろうと思うからです。
それはどういうものかというと、市販のメーカー製DACには絶対にない、音作りによる特定帯域のエネルギーバランスの凹凸などの華燭を廃した、正直すぎるくらい正直でフラットなバランスながら、驚くほどまっすぐな高域の伸びや繊細な分解能と見事な中低域の分離を讃えたレンジの広い低域(DC駆動)が合わさることで生まれる、
「物理特性が優れているD/A変換とはこういう聴こえ方なのだよ」
とでもDACが語り掛けてくるかような、、
奥行とレイヤー感ある音場空間再現性。
普段聴きなれた楽曲を聴いていてもそんな驚きがある音を出してきます。
これは本当に驚きで、AIT DACは他のDACと比べた際に、そのSN感の良さと情報量の多さでは余り負けたことが無かったし、こうした感覚を覚えさせてくれるDACだったのですが、最新のAIT DACはそれをいとも簡単に上回り、見事な正常進化を見せてくれました。
こんなにストレートな音があるのか、というある種の感動・感銘ですね。
デジタルに於ける7-8年の差は物凄いものなのだな、という陳腐な言葉で片づけるわけにはいかない、たゆまぬ技術開発で音を磨き続けていたAIT Laboの最新DACの出来栄えを遺憾なく感じる結果となりました。
ちなみにDACの設定として、DWA(Data Weighted Averaging:マルチビットDACにおいて、素子の製造誤差による音質劣化(歪み)を軽減・平均化するアルゴリズム=複数の同じ内部素子を切り替えながら駆動することで歪み成分を高周波のノイズへ変換する仕組み、とのこと)の設定をAとBで切り替えられるようになっており、Aの方が高解像でスッキリした音で音場空間が広いですが、僅かに音の重心が高くなります。
一方Bの方はAに比べると、微細な情報量が僅かに減衰し空間が狭くなる感じがしますが、音像が少し落ち着くような雰囲気があります。
ちなみにモードとしてはAがROHMのページでTHDが優れているとされる「2」の方で、(メーカーページで117dB THD+N)で、Bが115dB THD+Nの「1」方のようです。
僅か2dBの差とはいえ、結構聴感で違うものなのですね~
これも勉強になりました。
2.内部の構成
さて、そんな最新のAIT DACですが、手元のAIT DACからの進化点として、
1.ソフトウェア的にはPCMアップサンプリング(L/H)、DWA設定(A/A1/A2/B/B1/B2)
などがあり
2.ハード的には電源が強化(アナログ段のトランスがLR別でそれぞれ14VA(7VA x2系統)から、15VA(7.5VAx2系統))されたほか、USB入力がAmanero Combo 384からxing u30に変更になりPCM1536k/DSD1024入力に対応
などがあります。
内部を見ていくと、まず強化された電源が目に入ります。
これまでは基板実装品でしたが、とうとう本Versionからは個別マウントが必要なトロイダルトランスになっています、
電源は15V/7.5VA x2系統でトランスとしては15VAですね。
この部分は電源容量的に必要な容量はもう少し少ないらしいのですが、音質には影響があるようで余裕を持たせているようです。
そこからDAC基板に目をやると、AIT独自のFPGAの上を半分隠す形で、AK4191 + BD34302ekvを極近接配置したモジュール基盤がL/R並びます。
続くI/V変換アナログ段はOPA1612などをはじめとした現代のオペアンプが使われており、この辺は2020年代を感じます。2010年代初めてAIT DACをみたときは、LME49720などのオペアンプも使われていたと思いますが、最近の高性能DACは必ずと言っていいくらいOPA16X2シリーズが使われています。
出力は一般的なプリアンプに合わせることを合わせて電圧出力になっています。
AIT プリアンプなど一部の電流出力信号を受けられるプリを持っている方は、電流出力をしたほうが良いですね。
全体的な基板構成などはES9018Sの頃から変わっていないですが、電源とD/A変換前のオーバーサンプリング/デルタシグマ変換を独立させた構成は、ほぼディスクリートと言ってもいい構成に進化しています。
それがどれほど音の分解能に影響するか、、、
個人的関心であるDACの試聴経験積み重ねや、プチ研究としても好奇心を刺激されます。
AIT DACはもともとESS Saberチップを使っているころから、アップサンプリングはDACチップ内ではやらずFPGAでやっていましたが、そこからフロントエンド(デルタシグマ変換)をAK4191に分離したりしていくことで音がどう変わっていくか、
更にAK4191+AK4499EXバージョンを持っている人なら、最後のDACチップがROHMに変わることでどのくらい音が変わるか?比べることが出来るわけで、これはDACのアーキテクチャと音の関係に関心がある人にもとても面白いと思います。
3.試聴後感と今後
今回縁あってAK4191+BD34302ekv Diualを搭載した最新のAIT DACを聴いてみて、ESS9038 pro Dualと比べて大幅に進化した分解能にとても驚きました。
旭化成が鳴り物入りで市場投入したAK4191 + AK4499EXによる分離アーキテクチャは、I2S信号の入力→アップサンプリング→マルチビットデルタシグマ変換のプロセスを従来のD/A変換とチップから分離することでかつてない高音質を実現したと訴求しており、そのフロントエンドを担うのがAK4191、D/A変換を担うのがAK4499EXでした。
それをAIT Laboではさらに分離して実装しており、
I2S信号の入力+アップサンプリングを独自のFPGAで行い、アップサンプリング済みの信号(最大PCM1536kHz/DSD1024)のマルチビットデルタシグマ変換をAK4191で実行、そのマルチビットデルタシグマ変換をROHM BD34302で行っている、とても贅沢な構成です。
世の中では既製品のチップを高度に実装しただけのDACは数多くあれど、DSPやFPGA搭載で独自のデジタルフィルターやアップサンプリングを施しているだけでもとても少ないブランドしかなく、DA変換プロセス自体をディスクリートで作っているメーカーは数えるほどしかありません。
それを独自のオーバーサンプリング技術を実装したうえで、各メーカーから出ているフロントエンドLSIやDA変換チップを組み合わせて理想に近い動作を得る、、、
これがどれほど凄いことか、、、
おまけにメーカー品ですらトラブルシューティングを完璧にやらずに投入されることが多いこのご時世、最新AIT DACはこれまで通り変な誤作動をしたりノイズが出たりすることもなく、至極安定して動作しています。
余り値段の話は好きではないですが、オーディオ機器のインフレが激しい今の時代なら海外メーカーなら数百万円越えは当たり前、国内メーカーだったとしても100万円はゆうに超えて、中華メーカーならかろうじて100万円以内で手に入るか否か、、、といった塩梅だろうと思います。
とても感心したAIT DAC、
現在ES9018Sバージョンや9038バージョンを持っている方ならアップデートする価値があると思いますし、または先ずは貸出機材を聴いてみることをおすすめします。
とりあえず自分は、自宅にある他のシステムでも比べてみることをにしました。
次回はその記事を書こうかと思います。













コメント
過去のブログにて記事にされていた時にも感じましたが、とても素直なDACなんだろうなと改めて思い描くことが出来ました。
さまざまなメーカーがDACを販売していますが、少なからず意図的なメーカーの音が乗っていると思っています。
けれどLSRさんの評価・所感を見るに AIT DACはそう言ったあざとさを感じない愚直さを感じ、結局のところ「飽きない音」や「曲のポテンシャルを引き出す」といった音楽の質を上げる(音の質ではなく)傾向なのかな〜なんて思ってみたり。
自分も一度は体験してみたい領域だと思いました。
コメントありがとうございます!
AIT DAC, 音づくりの真実を知る?ためのDACとして是非一度聞いてみて頂きたいです!オーディオの目的は音楽を楽しむことなのは勿論だと思うのですが、趣味として機材に拘るなら音の構造自体を理解することも意外と重要だと感じていまして、そういう要素をかなり勉強させてくれるDACでもあると思います。
音楽が楽しいか?は多分にその人次第なので難しい命題ですが、AIT DACはいわゆる音楽を楽しみ増幅してくれるような分かりやすいエネルギーバランスの抑揚はないのですが、音自体の質が高く録音に刻まれた情報量の緩急が極めて高いスルーレートで感じられる結果、そこには抑揚がある、、、、とでもいうような。
表現が難しいですが、そんなふうに感じています。